
八十八夜という言葉を聞くと、自然の中で茶葉を摘む姿や伝統的な茶摘み歌が思い浮かびます。しかし、なぜ八十八夜が茶摘みにとって特別な日なのか、ご存じでしょうか?この日には、新茶の収穫時期としてだけでなく、古くから縁起の良い意味が込められていました。 今回は大正3年創業のほうじ茶専門店森乃園より、八十八夜とは何か、八十八夜と新茶の茶摘みとの関係をテーマにお届けしていきますので、ぜひご覧ください。
茶摘み歌とは?
茶摘み歌は作者不明の昔からある伝統的な歌です。 「夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る あれに見えるは茶摘ぢゃないか あかねだすきに菅の笠」 歌詞では、茶摘みの時期の美しい光景が歌われています。茶摘み歌は茶畑で働く女性たちが、茶葉を摘む作業をする時に鼻歌として歌っていたことがルーツだと考えられています。
八十八夜とは?
茶摘み歌に出てくる八十八夜は「はちじゅうはちや」と読みます。その意味は文字通り「88日目の夜」であり、立春から数えて88日目にあたる時期を指しています。
八十八夜は新茶の季節
立春から88日経過した頃は、新茶の収穫に適した時期です。新茶の味はタイミングに左右されるため、もちろん88日目ぴったりに収穫をするのではなく、農家は茶葉の育ち具合を見極めて、この頃に一気に収穫作業を済ませます。 具体的な収穫のタイミングは、鹿児島県などの収穫時期が早い地域では4月上旬、奈良県など収穫時期が遅い地域では5月中旬頃になります。今も昔も同様に八十八夜頃が新茶を摘み取るのに適した時期です。
八十八夜は5月2日頃のこと
茶摘み歌が生まれた頃の日本は、旧暦である太陰太陽暦を採用していましたが、現在は太陽の動きを基準にした太陽暦(グレゴリオ暦)が一般的です。 八十八夜は立春からカウントする日数ですが、どちらの暦を用いても毎年5月2日頃(八十八夜は立春の日付に依存するため、年によって前後)に該当します。
八十八夜は縁起が良いと言われる理由とは?
日本では昔から「八十八夜は縁起が良い」と考えられています。では、なぜ八十八夜は縁起が良いと言われているのでしょうか?
「八」という文字が末広がりで縁起が良い
「八」という漢字は、下に向かって広がる末広がりの形をしています。中国でも八は縁起の良い数字として知られており、携帯電話の番号・車のナンバープレートは8がつくものが人気を集めています。 また、「米」という文字を分解すると八十八になるという考え方もあり、八十八夜は文字だけを見ても縁起の良いものだと言えるのです。
八十八夜に摘みとった新茶を飲むと不老長寿になれる
昔から日本では、その季節に初めて収穫した魚介類・農作物を「初物」と呼んで縁起の良いものと考える風習があります。 特に八十八夜に摘み採られたお茶を飲むと、不老長寿になれる縁起の良いものとして扱われ、今でも、新茶は縁起の良い贈答品として定着しています。
八十八夜に種まきをすると米が豊作になる
八十八夜は縁起が良いという言い伝えは、農家に浸透していました。そのため、八十八夜に種まきをした米は秋に豊作になると考えられていたのです。八十八夜は茶摘みのみでなく、稲の種まきにも適した時期だったということです。
新茶の特徴とは?
新茶は縁起が良い飲み物として人気がありますが、その他にもいくつもの特徴があります。
爽やかな香りがある
新茶は若葉特有の爽やかな香りを楽しめるお茶です。新芽は非常に軟らかいため、お茶を淹れるたびに若々しいフレッシュな香りを楽しめるでしょう。 新茶以外のお茶の茶葉は繊維が増え、「硬葉臭」(こわばしゅう)という香りが発生しやすくなります。
渋みが少なく旨みが強い
新茶には非常に多くのテアニン・グルタミン酸などの旨み成分が含まれます。冬の間蓄えた栄養分が新芽に凝縮されるのです。
期間限定の特別感
現代はさまざまな技術でお茶の香りや風味を維持することができますが、昔は新茶を楽しむには新茶の時期のみのように期間が限定されていました。そのため新茶の希少価値は非常に高く、「今しか味わえないもの」として愛されていたのです。
お茶の呼び方について
続いて、お茶の呼び方について見ていきましょう。
一番茶
新茶の後に摘み採られたお茶のことまたは、新茶を一番茶と呼ぶケースもあります。「新茶」という言葉には、「旬のもの」「初物」という縁起の良さ、健康長寿の願いが込められています。
二番茶
二番茶は文字通り二番目に摘み採る茶葉であり、新茶を収穫した後2週間程度後に摘み採った茶葉を指します。 二番茶もフレッシュな香りが楽しめるだけでなく、カフェイン・カテキンは新茶よりも多く含まれます。強めの苦味が好きな方は、新茶よりも二番茶を選ぶ傾向があります。また、二番茶に多く含まれるカテキンを日常的に摂取すると、コレステロールの抑制など嬉しい健康効果が期待できます。
三番茶
三番茶は二番茶を収穫した後に摘み採る茶葉のことで、収穫時期は7月下旬〜8月上旬です。三番茶はカテキンが増え、苦味や渋みは強くなります。三番茶を摘むことで来年の茶葉の味が劣るケースもあるため、三番茶を収穫しない地域も存在します。
秋冬番茶
秋冬番茶とは9月下旬〜10月上旬に収穫されるお茶であり、ポリサッカライドという血糖値を抑えるサポート作用を持つ成分が含まれています。
番茶
番茶は、新茶・二番茶・三番茶などのお茶の呼び方とは別の呼び方であり、新茶以外の茶葉とお茶を作る時に生まれる出物(お茶の茎部分や製造時に発生する粉など)を含めた総称です。
八十八夜の新茶を楽しむ方法とは?
八十八夜の時期に摘み採られた新茶を存分に楽しむためには、新茶に適したお茶の淹れ方を知っておく必要があります。新茶の正しい淹れ方を知っておきましょう。
新茶をお湯で淹れる方法
新茶をお湯で淹れると、フレッシュな香りをしっかり楽しめます。
1. 沸かしたお湯を湯呑みに注いで湯呑みを温める
2. 急須に人数分の茶葉を入れる(湯のみ1杯(150ml)/茶さじ1杯程度)
3. 湯呑みに入れて冷ましたお湯を急須に戻す
4. 45秒〜1分半蒸らす
5. お茶の濃さを均一にするために湯呑みを往復しながら注ぎ分ける
最後の一滴までしっかり注ぐことで、二煎目もおいしく淹れられます。
新茶を水出しで淹れる方法
多めに作って保存する方も多い水出しの淹れ方は下記のとおりです。
1. ポットに10g程度(好みで量を調整)の茶葉を入れる
2. 500mlの水をポットに注ぐ
3. 冷蔵庫に90分以上入れておく
お茶の苦みや渋みが少なく飲めるのが特徴です。
新茶を氷出しで淹れる方法
新茶を氷で淹れると、旨み成分を感じやすくなります。
1. 急須に5gを入れてから茶葉の上に約50gの氷を入れる
2. 室温で15分〜1時間半程度放置する
3. 氷から溶け出した雫を注いで飲む
室温によりお茶ができるまでの時間が異なります。
まとめ:八十八夜とは?新茶の茶摘みとの関係を紹介!
いかがでしたか?今回の内容としては、
・八十八夜は立春から数えて88日目にあたる日である
・八十八夜に摘み採られた新茶を飲むと、不老長寿になれる縁起の良いものとして扱われていた
・お茶だけでなく八十八夜に種まきをした米は秋に豊作になると考えられていた
・新茶は若葉特有の爽やかな香りを楽しめるお茶である
以上の点が重要なポイントでした。この記事をお読みになった方の中には、新茶について興味を持たれた方もいるでしょう。新茶を楽しみにまち、毎年の楽しみの一つとしてみてはいかがでしょうか?
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