新茶は、縁起が良く限られた時期しか楽しめないお茶として昔から重宝されています。しかし、新茶と普通のお茶の違いがよく分からない方もいるでしょう。
今回は大正3年創業のほうじ茶専門店森乃園より、新茶の時期や特徴を詳しく解説していきます。新茶についての知識を増やしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
新茶の意味とは?
新茶とは、文字通りその年の最初に摘み取られた茶葉で作ったお茶を指します。新茶は「一番茶」と呼ばれることもあり、新茶とは逆に1年以上前に摘み取られたお茶は「古茶」に該当します。
お茶は1年に何回も収穫できる
お茶は芽を摘み取った後も芽が生えてくるため、何度も収穫可能です。その回数に合わせて、二番茶・三番茶と作られるお茶の名前が変わり、3〜5回程度収穫が繰り返されます。
新茶の特徴や魅力とは?
新茶には、次のような特徴・魅力があります。新茶と普通のお茶の違いを知りたいと考えている方は、実際に2つのお茶を飲み比べた上で、次のような違いを体感すると良いでしょう。
旨みが強く渋みが少ない
新茶は一番目の芽であるため、二番茶以降の茶葉と比較してテアニン・グルタミン酸などの旨み成分を多く含みます。なぜなら、このような成分は寒い時期にたっぷりと茶樹に蓄えられ、新芽に凝縮するのです。そのため、お茶の甘味を楽しみたいという方は、新茶を選ぶべきです。
爽やかな香りを楽しめる
新茶は特に葉が軟らかく繊維が少ないため、若葉のフレッシュな香りを楽しめます。そして、新茶独特の香りには心をリラックスさせる効果があり、精神的な疲れを癒してくれます。
縁起が良いと考えられている
日本人は初物を縁起が良いと考える傾向があり、「初物を食べると七十五日長生きできる」という言い伝えも残っているほどです。そして、新茶も同様に縁起が良いものとして重宝されています。そのため、新茶は贈り物に最適であり、贈る相手の健康と長生きを願う気持ちを伝えられます。
新茶の時期はいつ?
新茶の摘み取りの時期は4月下旬〜6月初旬、一番茶としてお茶が市場に出回るのは5月初旬頃からになります。
新茶の時期は気候や地域によって変わる
お茶は農産物であり、必ず予定通りかつ全てのお茶が同じペースで成長するわけではありません。また、茶農家は茶葉の生育具合を見極め、最適なタイミングで新茶を摘み取っています。 そのため、新茶はその年の天候、茶畑がある地域、お茶の種類などの影響を受けて、摘み取りの時期が変わります。
ちなみに、昔は新茶の摘み取り時期を「八十八夜」と表現していました。八十八夜とは立春を1日目と数えた88日後のことで、現代では5月1日頃です。八十八夜の数え方は、茶摘み歌でも「夏も近づく八十八夜・・」のように使われています。
新茶の季節によって変わる特徴とは?
摘み取り時期の違いは新茶の特徴に影響を与えます。この章では、新茶の摘み取り時期別の特徴について見ていきましょう。
4月下旬〜5月初旬頃の新茶の特徴
4月下旬〜5月初旬の早い時期に摘み取られた新茶は、太陽の光を浴びる量が少なく、お茶の旨み成分であるテアニンが豊富に含まれています。そのため、渋味や苦味が控えめで甘さが強い味わいになる傾向があります。
5月中旬〜6月初旬頃の新茶の特徴
太陽の光による紫外線が強くなる5月中旬〜6月初旬頃の新茶は、しっかりと成長して抗菌・抗酸化作用など多くの健康効果が期待できるカテキンが豊富に含まれます。
新茶の「出物」について
新茶を加工する過程で選別される茶の芽・茎・粉の茶葉を「出物」と呼びます。出物は副産物的なものとはいえ、茶葉全体から少量しか集められないため、希少であるとも考えられており、新茶の加工のピークが過ぎた頃に入手可能になります。
芽茶
芽茶はお茶の芽の先部分を選別したお茶であり、お茶の旨みが凝縮されています。
茎茶
茎茶はお茶の茎部分で作られたお茶であり、特に爽やかな香り・甘味を楽しめます。苦味や渋味が苦手な方でも飲みやすく、茶柱が立ちやすいという特徴もあります。
粉茶
煎茶や玉露などの製造工程で、茶葉を切断や蒸し作業などで砕けた細かい部分を集めたお茶が粉茶です。濃厚でしっかりとした味わいが特徴です。
新茶を美味しく楽しむためのお茶の淹れ方とは?
新茶を美味しく楽しむためには、お茶の淹れ方も工夫するべきです。
ここでは、新茶の淹れ方について説明します。
1.お湯を沸騰させて湯呑みに入れる
通常のお茶は70度程度のお湯で淹れますが、新茶には80度程度のお湯が適しています。お湯を沸騰させて湯呑みに入れてから急須に注ぐようにすることで、湯呑みを温めながらお湯が調度良い温度になるでしょう。
2.急須に湯呑みのお湯を戻し茶葉を開く
湯呑みが温まったら、急須に湯呑みのお茶を戻します。急須の蓋をして、40秒程度待ちましょう。通常のお茶よりも少し短めの抽出時間で構いません。
水出しで新茶ならではの爽やかさを楽しむ
新茶を水出しで楽しむという方法もあります。冷水ポットを活用し、水1リットルに対して10〜15g程度の茶葉を入れて冷蔵庫で冷やしましょう。 3〜6時間後には、新茶ならではの旨みと甘味が凝縮された冷茶ができあがります。新茶を水出しする際には、茶漉しがついたフィルターインボトルを活用するのがおすすめです。
新茶の鮮度を保つ保存方法とは?
新茶に限らず、お茶は開封後少しずつ鮮度や風味が失われてしまいます。正しい新茶の保存方法を知り、その風味や香りを保てるようにしてください。
空気に触れさせない・光を当てないようにする
劣化を防ぐためには、開封後の茶葉はなるべく空気に触れさせないようにすること、そして光に当てないようにしてください。具体的には、中蓋があり茶葉をしっかり密封できる茶筒を使うと良いでしょう。 密封容器に入れた茶葉は、直射日光・蛍光灯を避けるために温度変化が少なく暗い場所に保管します。
冷蔵庫で保管しない
茶葉は温度変化を嫌うため、冷蔵庫で冷やしてはいけません。室温と温度差が生まれることで、茶葉に結露ができる恐れがあります。また、冷蔵庫の臭いが茶葉に移り、新茶の香りが損なわれてしまいます。
乾燥剤を活用して湿気を吸収させる
新茶は空気と同じように水分にも弱いため、海苔やお菓子についている乾燥剤を活用して劣化を防ぐという手もあります。特に茶筒が用意できない場合には、乾燥剤と茶葉を一緒に袋に入れて密封すると良いでしょう。この際、袋の口は空気が入らないようにしっかり閉じてください。
まとめ:新茶の時期はいつ?新茶は普通のお茶と何が違う?
いかがでしたか?今回の内容としては、
・新茶はその年最初に摘み取られた茶葉から作られる縁起の良いお茶で、特に限られた時期しか楽しめない
・新茶の摘み取りの時期は4月下旬〜6月初旬、一番茶としてお茶が市場に出回るのは5月初旬頃
・旨み成分が多く含まれ、甘味が強く渋味が少ない特徴がある
・若葉のフレッシュな香りが楽しめ、リラックス効果も期待できる
・鮮度を保つには密封容器で保存し、冷蔵庫は避ける
以上の点が重要なポイントでした。新茶は春から初夏にかけての限定的な楽しみであり、日本の文化と縁起を象徴するお茶です。贈り物としても人気がありますので、新茶に興味を持たれた方は、ぜひ手にとっていただければと思います。
森乃園では全国各地の名産地から選び抜かれた煎茶をご用意
森乃園では、日本各地の厳選された煎茶を取り揃え、豊かな味わいをお届けしています。例えば「煎茶産地飲み比べセット」では、狭山茶、富士茶、知覧茶など、名産地から選び抜かれた銘茶を一度に楽しむことができます。 それぞれの茶葉は、その土地特有の気候と風土によって育まれた、個性豊かな味わいが特徴です。深みのある香りと、まろやかな口当たりを堪能しながら、お好みの一杯を見つけてみませんか。
日本の茶文化を深く味わうひとときを、ぜひご自宅でお楽しみください。