
緑茶は、日本が誇る伝統的な飲み物であり、国内外で多くの人々に親しまれています。その中でも、玉露と煎茶は特に人気の高い種類です。しかし、その類似性から、「何が違うのか分からない」と感じる方も少なくありません。
今回は大正3年創業のほうじ茶専門店森乃園より、玉露と煎茶の栽培方法、味わい、淹れ方、さらには栄養成分の違いまで詳しく解説します。お茶の世界にさらに深く踏み込んでみたい方は、ぜひ最後までお読みください。
そもそも緑茶とは何か?
玉露と煎茶の違いを知る前に、お茶の分類について知りましょう。お茶は栽培方法や加工方法などさまざまな要素により分類され、緑茶・紅茶・白茶・黒茶など様々な種類があります。
玉露と煎茶は緑茶の一種
緑茶は茶葉を発酵させずにつくった茶葉であり、日本で作られる緑茶の多くは蒸製で、玉露・煎茶・かぶせ茶・番茶・玉緑茶・てん茶などの種類があります。「玉露・煎茶・緑茶の違いが分からない」と疑問に思う方もいるようですが、玉露と煎茶は緑茶の一種であると考えてください。
玉露と煎茶の栽培方法の違いとは?
玉露と煎茶は栽培方法が違います。まずは、それぞれのお茶の栽培方法について知りましょう。
玉露は茶摘み前に日光を遮って育てる
玉露は新芽が出始めるタイミングである茶摘みの約3週間前から、よしずなどを使って日光を遮り育てます。茶摘み前は90%以上もの日光を遮ることで、光合成をストップさせてお茶の旨み成分であるテアニンがカテキンに変化することを防ぎます。
煎茶は日光を当てた状態で茶葉を摘み取る
煎茶は玉露のように日光を遮る工程をせず、新茶が出てから摘み取りまで日光に当たったお茶を使います。一般的には、煎茶に使われる茶葉は新芽であり、成熟した茶葉は番茶と呼ばれます。 同じ茶の木から摘み取られたお茶でも、摘み取りのタイミングにより呼び名が変わることを知っておきましょう。
玉露を育む被覆栽培とは?
玉露の栽培方法である「被覆栽培」とは、一定期間茶葉によしずを被せて日光を遮ることを指します。この章では、被覆栽培についてより詳しく見ていきましょう。
遮光資材はよしず・ワラなど
日光を遮るために活用される資材は、遮光率・耐久性を考えて選択されます。多くの茶園では被覆栽培に、よしず・ワラ・黒色の寒冷紗などを活用します。
遮光率は少しずつ上げていく
玉露の被覆栽培では、茶摘みまでの期間に合わせて茶葉の遮光率を少しずつ上げていきます。具体的には、まず70〜80%の遮光率で日光をカットし、茶葉を摘み取る約1週間前頃には遮光率を90%以上まで高めるのです。
地域によっては収穫後の茶葉を数ヶ月寝かせる
玉露の栽培方法・製造方法は地域や茶園により異なります。場合によっては、収穫後の茶葉を専用の蔵の中で数ヶ月寝かせ、さらに熟成させた上で出荷するケースもあります。玉露の茶葉は寝かせることで、旨みが茶葉全体に行き渡ります。
被覆栽培の効果
被覆栽培の効果は、テアニンがカテキンに変わることを抑制するだけではありません。被覆栽培の効果は、玉露の製造に大きな影響を与えると考えてください。 ・葉緑素の分解が抑えられて鮮やかな緑色の茶葉になる ・病害虫の発生を抑制する ・保温効果により摘採時期を早められる ・茶葉が固くなりにくく摘採時期を長くできる
玉露と煎茶の味・コクの違いとは?
玉露と煎茶は製造方法が異なることから、味やコクも別のものになります。続いて、玉露と煎茶の味・コクの違いについて見ていきましょう。
玉露は旨みと深いコクを楽しめる
玉露は煎茶よりも旨みを持ち、コク深い味わいです。なぜなら、栽培過程で日光を遮ることで光合成を抑制し、お茶の苦味成分であるカテキンを増加させずに、旨み成分のテアニンの含有量を増やすためです。玉露は煎茶と比較して、しっかりとした飲みごたえがあると言えるでしょう。
煎茶はすっきりとした爽やかな味わい
日光に当てて栽培される煎茶は、光合成によりテアニンがカテキンに変化します。カテキンはお茶の渋みのもとであり、旨みと渋みを兼ね備えたすっきりとした味わいに仕上がります。水分補給も目的としたお茶を選ぶ時には、ゴクゴク飲みやすい煎茶を選ぶべきでしょう。
玉露と煎茶は淹れ方も違う?
玉露と煎茶は適した淹れ方も異なります。その違いを理解し、美味しいお茶が淹れられるようになりましょう。
玉露はぬるめのお湯で淹れる
玉露を淹れる時に、熱過ぎるお湯を使ってはいけません。50〜60度程度の人肌まで冷ましたお湯で淹れましょう。また、玉露はお湯を注いだ後に3分程度じっくり蒸してからいただきます。時間をかけて蒸らすことで、お茶の旨みが引き出されます。
煎茶は80度のお湯で淹れる
煎茶は80度程度の熱いお湯で淹れるものです。玉露とは違い、お湯を注いだ後の蒸らし時間は1分程度に抑えてください。煎茶を蒸らし過ぎると、2煎目以降に苦味や渋みが出てしまいます。
玉露と煎茶のその他の違いとは?
玉露と煎茶には、味わいや淹れ方以外にも違いがあります。それぞれのお茶の特徴を知っておきましょう。
玉露は煎茶より値段が高め
玉露は栽培に日光を遮る工程が追加されるため、煎茶よりも多くの手間・コストがかかります。その分玉露は高級茶として値段が張る場合があります。
玉露と煎茶は含まれる栄養が異なる
同じ茶葉からできていても、玉露と煎茶の栄養成分量は異なり、テアニン・葉酸・ビタミンCはより多く含まれています。それに対して煎茶は、玉露より多くのカテキンを含みます。また、カフェインの含有量にも大きな違いがあり、玉露には100mlあたり約160mg・煎茶は100mlあたり約20mgのカフェインが含まれています。
玉露と煎茶は合うお菓子も変わる
玉露と煎茶は味わいが異なるため、相性の良いお菓子も変わります。どちらのお茶も和菓子・洋菓子に合いますが、煎茶は外に生地がある餡子を使用した和菓子やクリーム系の洋菓子との相性がとても良く、玉露は上品な甘さの和菓子や洋酒の風味が引き立つ洋菓子と合わせやすいです。
玉露と煎茶の中間に位置するかぶせ茶とは?
玉露と煎茶は栽培方法に違いがありますが、その中間に位置するお茶としてかぶせ茶が存在します。
かぶせ茶は日光を遮る期間が玉露よりも短い
玉露は茶葉を摘み取る3週間前から日光を遮る栽培方法であるのに対し、かぶせ茶の被覆期間は1週間〜10日程度です。かぶせ茶の被覆期間は茶園により異なり、被覆期間が長いほど玉露に近い品質に仕上がります。
まとめ:玉露と煎茶の違いとは?それぞれの特徴を紹介!
いかがでしたか?今回の内容としては、
・玉露は日光を遮る被覆栽培で育てられ、旨みと深いコクが特徴
・煎茶は日光を浴びた茶葉を使用し、すっきりとした爽やかな味わいが魅力
・淹れ方では、玉露は50〜60度のお湯でじっくり蒸らし、煎茶は80度のお湯で短時間蒸らすのがポイント
・玉露は高級茶として煎茶より値段が高く、栄養成分やカフェイン量も異なる
以上の点が重要なポイントでした。玉露と煎茶、それぞれの魅力を知ることで、日々のお茶時間がさらに豊かになります。飲み比べを通じて、自分の好みに合うお茶を見つけてみてはいかがでしょうか?お茶の奥深さを感じるひとときをお楽しみください。
森乃園では全国各地の名産地から選び抜かれた煎茶をご用意
森乃園では、日本各地の厳選された煎茶を取り揃え、豊かな味わいをお届けしています。例えば「煎茶産地飲み比べセット」では、狭山茶、富士茶、知覧茶など、名産地から選び抜かれた銘茶を一度に楽しむことができます。 それぞれの茶葉は、その土地特有の気候と風土によって育まれた、個性豊かな味わいが特徴です。深みのある香りと、まろやかな口当たりを堪能しながら、お好みの一杯を見つけてみませんか。日本の茶文化を深く味わうひとときを、ぜひご自宅でお楽しみください。