日本茶は、産地ごとにそれぞれの場所の気候や土壌を活かした栽培方法や製法が存在します。そのため、産地が変わればお茶の味や香りも異なってきます。
中でも日本茶の生産量が多い静岡県・鹿児島県・三重県は、「日本茶の三大産地」と呼ばれています。今回は、大正3年創業のほうじ茶専門店森乃園より、日本茶の産地や産地別のお茶の特徴をテーマにお届けしていきます。日本茶の名産地を知りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
日本茶とは?
そもそも日本茶とは、日本で作られるお茶の総称であり、中でも不発酵で作られる日本茶を緑茶と呼びます。不発酵茶は摘み取った茶を早い段階で加熱して発酵を止め、乾燥させて仕上げます。また、発酵により作られるお茶には、紅茶や烏龍茶などがあります。
日本茶の種類
日本茶には、次のような種類があります。
煎茶:新芽を蒸した後に揉みながら乾燥させたお茶
玉露:新芽に一定期間覆いをかけて直射日光が当たらないように育てたお茶
かぶせ茶:玉露と同じように作られるが覆いを被せる時間が玉露より短いお茶
番茶:硬化が進んだ茶葉を原料としたお茶
茎茶:茶葉ではなく茎のみを使って作られるお茶
ほうじ茶:煎茶・番茶・茎茶などを褐色になるまで焙じて作られるお茶
粉茶:玉露や煎茶の製造過程で生まれる細かくなった茶葉で作られるお茶
玄米茶:玄米を炊いて番茶や煎茶をブレンドしたお茶
それぞれのお茶は、使われる茶の部位や種類のみでなく、製法が変わることで別のお茶に仕上がります。
お茶の三大産地とは?
お茶の三大産地とは、日本の中でも特にお茶の生産量が多い地域であり、静岡県・鹿児島県・三重県のことを指しています。中でも静岡県と鹿児島県の荒茶生産量を合わせると、全国生産量の約7割を占めているのです。続いて、お茶の産地ごとの特徴を見ていきましょう。
静岡県
お茶と言えば「やぶきた」で有名な静岡県を想像される方も多いかと思いますが、豊かな自然と適度な日照時間、一日の間に生まれる寒暖差が茶葉に良い影響を与えます。そのため、山間地では多くの小規模農家がお茶を作っており、農園ごとに個性がある風味を追求しています。
静岡県の茶栽培は鎌倉時代頃から始まっており、明治維新後に大きな発展を遂げました。昔から日本一のお茶の生産量を誇り、静岡県の牧之原台地には日本一の広さの茶畑が存在します。
静岡で生産されるお茶の総称は「静岡茶」ですが、地域ごとにブランド茶が存在します。具体的には、「本山茶」「川根茶」「掛川茶」「天竜茶」などが有名です。
鹿児島県
温暖な気候に恵まれる鹿児島県では、春の訪れが早いことから日本で最も早く新茶が収穫できるという特徴があります。鹿児島県の積極的なお茶作りの開始は昭和40年代以降と後発ではあるものの、機械化を想定した茶畑作りにより、急激にお茶の生産量を向上させました。
また、鹿児島県は南北に細長い形状をしているため、新茶から四番茶まで長い期間お茶の収穫を続けられます。鹿児島県のお茶は「かごしま茶」と呼ばれ、「ゆたかみどり」「さえみどり」「あさつゆ」などの複数の品種が存在します。
三重県
三重県は南北に長い形をしており、それぞれの土地の地形や気候の特徴を活かしたお茶作りが行われています。
特にお茶作りの中心地である北勢地域では煎茶やかぶせ茶、南勢地域では深蒸し煎茶が多く作られます。三重県で作られるお茶は「伊勢茶」と呼ばれ、葉肉が厚く濃厚な味わいです。
お茶の種類によって主な産地が異なる
ここまでで、日本茶の三大産地がどのようなものかお分かりいただけたかと思いますが、お茶の種類ごとに多く生産される地域が変わります。
例えば、煎茶の場合は静岡県・鹿児島県・宮崎県、かぶせ茶は三重県・奈良県・福岡県などで多く生産されます。また、ほうじ茶は石川県の加賀棒茶、宇治地方の一番茶を焙煎した宇治ほうじ茶が有名です。
日本の三大銘茶とは?
日本茶は日本の伝統的な飲み物です。中でも特に品質が良いお茶は「日本三大銘茶」と呼ばれ、昔から多くの人に愛されています。続いて、日本の三大銘茶について見ていきましょう。
静岡茶(静岡県)
静岡茶には、浅蒸し製法で作られる香り豊かなお茶や、深蒸し製法の深い渋味を味わえるお茶など、さまざまな種類が存在します。
特に「本山茶」は静岡最古のお茶と言われ、優しい口当たりと爽やかな香りを楽しめます。甘味・旨味・上質な渋味のバランスが取れている本山茶は、「天然の玉露」と呼ばれることもあるのです。
宇治茶(京都府)
宇治茶は、京都府・奈良県・滋賀県・三重県の茶葉を、京都府内の業者が宇治地域に由来する製法で仕上げたお茶です。浅蒸しの宇治茶は濁りのない美しい色合いであり、渋味と甘味の両方を楽しめるという特徴を持ち、日本の茶文化の象徴的存在です。
狭山茶(埼玉県)
狭山茶はお茶の産地としては冷涼な地域であるであるため、茶葉が厚くコクがあり濃厚な味わいに仕上がります。
また、お茶の仕上げ段階で熱を加える「狭山火入れ」という製法が特徴的で、十分に乾燥することで貯蔵性も高くなります。年に2回しか収穫できないことから、生産量が少ない貴重なお茶だと言われています。
産地別の自分に適したお茶の選び方とは?
自分好みのお茶を見つけたい…とこだわりのある方は、お茶が育った環境に注目することをおすすめします。お茶は栽培環境の影響を受けて、香りや風味が変わるのです。続いて、お茶の選び方について見ていきましょう。
すっきりしたお茶を求めているのなら、山で栽培されたものを選ぶ
山で育ったお茶は涼しい気候と日照量の少なさから、お茶の苦味・渋味成分であるカテキンが控えめですっきりとした味になります。特に浅蒸しで作られたお茶は澄んだ色をしており、見た目も爽やかな印象です。
お茶らしい苦味・渋みを楽しみたいなら里で栽培されたお茶がおすすめ
山で育ったお茶とは対照的に、里で育ったお茶は十分な日光を浴びており、カテキンが豊富で肉厚な茶葉になります。特に深蒸しの商品は、渋みがマイルドな渋味と濃厚なお茶の味を楽しめます。
お茶を選ぶ時の注意点とは?
自分にぴったりのお茶を選ぶ時には、次のような注意点も意識しておきましょう。
お茶は淹れ方によって香りや味が変わる
お茶の種類が違えば、適切なお茶の淹れ方も変わります。また、お湯の温度や蒸らし時間を調整することで、同じお茶でも違う風味に仕上がるのです。
一般的には、低温で淹れたお茶は苦味と渋味が少ないさっぱりとした味わい、高温で淹れたお茶はしっかりとした濃厚なお茶の味になります。さらに、お茶の味は茶の量、抽出時間の長さの影響も受けるため、一つのお茶にもさまざまな楽しみ方があると言えるでしょう。
お茶は開封後に鮮度が落ちていく
その他の食品と同じように、お茶も開封後時間の経過とともに鮮度が落ちてしまいます。お茶の劣化を予防する目的で、開封したお茶は密封容器に入れて低温状態を保ってください。
また、お茶の容器内に結露が発生する問題が起こるため、開封後のお茶は冷蔵庫に入れるべきではありません。一度にさまざまなお茶を使い分けたいと考えている方は、小分け包装の商品を選択すると良いでしょう。
まとめ:お茶(ほうじ茶・煎茶)の名産地を紹介!お茶の三大産地はどこ?
いかがでしたか?今回の内容としては、
・日本茶とは、日本で作られるお茶の総称であり、中でも不発酵で作られる日本茶を緑茶と呼ぶ
・日本茶には、煎茶・玉露・かぶせ茶・ほうじ茶などの種類がある
・静岡県・鹿児島県・三重県はお茶の三大産地
・静岡茶・狭山茶・宇治茶が日本三大銘茶
以上の点が重要なポイントでした。お茶にこだわりたい…という方は産地に着目すると、お茶選びも楽しくなるでしょう。
森乃園では全国各地の名産地から選び抜かれた煎茶をご用意
森乃園では、日本各地の厳選された煎茶を取り揃え、豊かな味わいをお届けしています。例えば「煎茶産地飲み比べセット」では、狭山茶、富士茶、知覧茶など、名産地から選び抜かれた銘茶を一度に楽しむことができます。
それぞれの茶葉は、その土地特有の気候と風土によって育まれた、個性豊かな味わいが特徴です。深みのある香りと、まろやかな口当たりを堪能しながら、お好みの一杯を見つけてみませんか。日本の茶文化を深く味わうひとときを、ぜひご自宅でお楽しみください。